2022年11月21日〜27日

「赤もみじの『道程』」を配信で観る(ナルゲキ/20日開催)。

 8月に活動休止発表→9月にラジオで本人たちによる事情説明→11月上旬からYouTubeドキュメンタリー4本配信→11月20日ライブ開催、そして解散が正式に決定した。

 「芸人は失敗しても何しても笑いに変えられる職業」と当事者は言う。でも限度というものはあるし、これは”生き様”を消費する/させる風潮がたどりついた極北、開けてはいけない最後の扉を開けた先にあったどん詰まりの終着地点だ。「裏側見せんな!」と村田は叫ぶ。その叫びで笑いが起きる。「村田さん、”芸人”でかっこよかった」と感嘆する。その気持ちや笑いは自分にもあれど、同時にすごく苦いものを感じる。

 この一連のドキュメンタリーをかろうじて虚実皮膜のあわいに留めたものがあるとすれば、「こんなことはよくあることですから」「どんな解散だって”こう”なんです」と繰り返したMCのストレッチーズの言葉と、最後の即興漫才のさなかに阪田から飛び出した「じゃあ最後に、今度一緒にパチンコ行きましょうよ」という言葉ではないか。

 前者は、幾多の解散した組のそれぞれに愛憎に満ちた成り行きがあってどれも同程度にしっちゃかめっちゃかであり、だから赤もみじのこれもそうした凡庸なワンオブゼムに過ぎないのだということを伝えていた。本当にそうなのかどうか、観客に真偽を確かめる術はない。ストレッチーズのバランス感覚から生まれた発言だろうけれど、結果的に、これだけ内幕をさらけ出した(ように見える)映像を見せてもなお、観客には踏み入ることのできない”芸人の世界”というものが存在することに思い至らせる言葉になっていたように思う。

 後者、「パチンコ行きましょう」は舞台の上で(漫才の中で)解散を決めたから出てきた言葉だろう。こうして解散の道程をオープンにせずに終わっていったら、そんなことは阪田も言わなかったんじゃないか。でもどうだろう、そうじゃなくても言ったのか? 言ったかもしれないな、そして現実にそうなったのと同じように2人で本当にパチンコにも行ったかもしれない。そう考えることも、観客からは見えない舞台裏を想像させる。

 それにしても、「じゃあパチンコ一緒に行きましょうよ」からのくだりは、即興であるにもかかわらず本当に面白い漫才だった。あれがあの場で生み出せるのはコンビだからなんだろう。

 とはいえやっぱり隠し撮りをドキュメンタリーと称することはとても引っかかるし、これが「あり」なんだとなってほしくはない(ならないだろうけど)。そこまで身を切ってくれなくていいよ、と思う。また同じようなことが行われたら、結局観たくなってしまう自分と再び向き合わなければいけなくなるから。

 

◯ほかに観たもの

『ネコちゃん軍団vsロン毛カメラ軍団』(漫劇/配信)